冷戦時代、アポロ11号による月面着陸の光景で幕を開け、やがて9.11同時多発テロに端を発するアフガン・イラク侵攻を境に衰弱を始める超大国アメリカと、再び戦場へ回帰して行く日本を描き出し、予見的な作品でもあった3枚組大作「911FANTASIA」。震災に向き合い、足しげく東北を訪れ作りあげた「リトルメロディ」。それからの七尾は、さらにのめり込むようにして作り続けた。そして2015年秋、友人の里道敦からライブオファーを受け、どうしても試みたかったことに着手する。特殊ワンマン「兵士A」。断髪し自衛官の扮装をした七尾が演じる兵士Aとは、近い将来、この国に、数十年ぶりに現れるかもしれない1人目の戦死兵。書きためられた大量の新曲の中から相応しい楽曲を選び、時間と空間を越えておよそ百年間の壮大なスパンで、人間であることの困難さや、微かな希望を描いたこの壮絶なライブを、新進気鋭の映像作家・河合宏樹が撮影、編集。七尾旅人の最新アルバムとも呼べる、前例のないライブ映像作品として結実した。
ポップ史に残るさまざまなロックオペラやコンセプトアルバムを想起させつつも、そのどれとも似ず、さらに徹底された世界観。オルタナティヴ・フォーク、ポエトリー、スタンダード歌曲、トラディショナル、メロウソウル、即興、ノイズアヴァンギャルド、そしてJukeのようなダンスミュージックに至るまで、多様な音楽性が1つのテーマに奉仕していく。「地獄の黙示録」、「フルメタル・ジャケット」などの傑作映画も思い起こすが、驚くべきは、それをガットギターによる弾き語りと、ヴォイス・エフェクト、幾つかのチープな機材のみでやり遂げたということ。これまで常に最小の道具と手がかりで、どんなものでも音楽化しようと試み続けてきた七尾が、いつしか類を見ない新しい音楽表現の可能性を、手繰り寄せたようにも思える。本来完全なソロで行われる予定だったこの公演を、日本屈指のサックスプレイヤー梅津和時が、事前リハーサルなし完全インプロヴィゼーションによる濃密にして鮮烈な伴奏で、そして鬼才アニメーション作家ひらのりょうがミニマリスティックに研ぎ澄まされた舞台映像で支え、「兵士A」の世界をさらに深化させている。
七尾旅人『兵士A』予告編 / TAVITO NANAO『Soldier A』trailer
七尾旅人 "兵士Aくんの歌" (映像作品『兵士A』より)
七尾旅人 - 兵士A
[ ブルーレイ ]
[ DVD ]
初回特典情報
〇特典ダウンロードコード付きステッカー(タワーレコードver.)
※ライブ映像「サーカスナイト in 四万十川」 撮影:河合宏樹と「兵士A 壁紙画像(タワーレコードver.)」がダウンロードいただけます。
〇特典が付くかは各店舗にお問い合わせください。
〇特典ダウンロードコード付きステッカー
※ライブ映像「サーカスナイト in 四万十川」 撮影:河合宏樹と「兵士A 壁紙画像」がダウンロードいただけます。
[収録楽曲]
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プロローグ
1.SQUAD RADIO
2.戦前世代
3.きみはひかり ぼくのひかり
4.1945
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Aくんが生まれ、そして死ぬまで
5.ぼくらのひかり
6.リンドンベル(じてんしゃにのれたひ)
7.Tender Games
8.兵士Aくんの歌
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Aくんが殺したひとびと
9.少年兵ギラン
10.LOVE IN WARTIME
11.Almost Blue
12.難民の歌
13.Fly me to the Moon
14.アトムの思い出
15.I'M WARBOT
16.foolish time
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再会
17.2020 追憶の東京オリンピック
18.1938 追憶の兵士「えい」
19.エアプレーン
20.赤とんぼ
21.七回忌
22.Perfect Protection(完全なる庇護)
23.誰も知らない
5/29 UPDATED
2020/11/20 UPDATED
8/25 UPDATED
七尾旅人
シンガーソングライター。これまで『911fantasia』『リトルメロディ』などの作品をリリースし『Rollin'
Rollin'』『サーカスナイト』などがスマッシュヒット。唯一無二のライブパフォーマンスで長く思い出に残るステージを生み出し続けている。即興演奏家としても、全共演者と立て続けに即興対決を行う「百人組手」など特異なオーガナイズを行いアンダーグラウンド即興シーンに地殻変動を与え続ける。その他、ビートボクサー、聖歌隊、動物や昆虫を含むヴォーカリストのみのプロジェクトなど、独創的なアプローチで歌を追求する。開発に携わって来た配信システムDIY
STARSを使って【DIY HEARTS東日本大震災義援金募集プロジェクト】や、世界中の貧困地域、紛争地域から作品を募り流通回路を開く【DIY
WORLD】も開設。手料理のレパートリーは玉子かけご飯のみ。犬が好き。
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河合宏樹
監督
学生時代より自主映画を制作、震災後は、ミュージシャン、パフォーマーなど、表現者に焦点を当て撮影を続け、記録映像に留まらない「映像作品」をアーカイヴ。時にはドキュメンタリーとして作品化。
制作チームでの名義は「Pool Side Nagaya」。
2014年、古川日出男、管啓次郎、小島ケイタニ―ラブ、柴田元幸が震災後、被災地を中心に上演した朗読劇「銀河鉄道の夜」の活動を二年に渡り追った初のドキュメンタリー映画「ほんとうのうた」を発表、
渋谷ユーロスペースを皮きりに全国各地上映。次回映画作品に向け鋭意制作中。
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梅津和時
サックス、クラリネット
宮城県仙台市出身。国立音楽大学在学中よりデビュー。70年代NYのロフトジャズ・シーンで活躍、帰国後、生活向上委員会、続くD.U.B.(ドクトル梅津バンド)でブレイクするとともに、忌野清志郎のRCサクセションでも一躍、知られる。以後、国内外の多様なミュージシャン、表現者と無数のコラボレーションを重ね、それらの集大成ともいえるノンジャンル無差別セッション『大仕事』シリーズは、90年代西荻窪アケタの店から始まり、現在も新宿PIT INNに場を移して継続している。自身のアルバムほか録音に参加した音源・作品は数知れず。傍らで、off noteレーベルにおける沖縄民謡の大工哲弘のプロデュース作品ほか、映画『我に撃つ用意あり』(若松孝二監督)に始まり、最近ではNHK BSプレミアムドラマ『嫌な女』など映画やCM・TVドラマの音楽、さらに執筆、ナレーションなど多方面にも活躍する。現在リーダーバンドとして、KIKI BAND、こまっちゃクレズマ、梅津和時ちびブラス等を率いると同時に、おおたか静流、三宅伸治、中村耕一、中山ラビ、白崎映美、石橋凌、七尾旅人、佐野篤等、様々なユニットやアーティストのサポートとしても活動中。さらに異ジャンルとの即興コラボレーションなど、年間200本近い驚異的なライブ本数をこなしながら国内外で活躍を続ける。
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ひらのりょう
舞台映像
1988年埼玉県春日部市生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。FOGHORN所属。
産み出す作品はポップでディープでビザール。文化人類学やフォークロアからサブカルチャーまで、自らの貪欲な触覚の導くままにモチーフを定め作品化を続ける。その発表形態もアニメーション、イラスト、マンガ、紙芝居、VJ,音楽、と多岐に渡り周囲を混乱させるが、その視点は常に身近な生活に根ざしており、ロマンスや人外の者が好物。「ファンタスティックワールド」(トーチ)「とびだせ!ミラーボールちゃん」(CREM)連載中。
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Message for Soldier A
- 岡田利規(演劇作家・小説家・チェルフィッチュ主宰)
- 佐野元春(ミュージシャン)
- しりあがり寿(漫画家)
- 岡村靖幸(ミュージシャン)
- 白石(自衛官)
- いとうせいこう(作家・クリエーター)
- 宇川直宏(DOMMUNE主宰)
- 友部正人(シンガーソングライター)
- やけのはら(DJ)
- 髙城 晶平(cero)
- 細馬宏通(滋賀県立大学教授)
- 地引雄一(イーター、テレグラフレコード)
- 藤田貴大(演劇作家)
- 三浦誠音(七尾が南相馬の朝日座で出会ったお客さん、友人)
- 立川吉笑(落語家)
- 難波卓己(Mother Tereco)
- 和田永(Open Reel Ensemble)
- 青葉市子(音楽家)
- マヒトゥ・ザ・ピーポー(音楽家)
- テンテンコ(ミュージシャン、DJ)
- 柿谷浩一(早稲田大学講師・日本文学/文化研究者)
- 蔵屋美香(東京国立近代美術館キュレーター)
- 原一男(映画監督)